花装

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

花装

 
古い記憶。

誰にも見せるつもりなく撮られた写真は
ハードディスクの中で眠っていた。
記憶から消えそうになっていた写真たちは
まぎれもなく現在の自分をつくっている
大事な要素だ。
 
人間は要素のかたまりだ。
誰か亡くなったときに悲しいのは
その人の要素には、もう
なり得ないことを知っているからだ。

 
私はもういちどハードディスクの中の記憶たちと向かい合った。
すると それらはまるでよそゆきの顔を持ち
向き合うごとに不確かさは薄れ
わたしの確かな一部となり
はじめて記録としての役割をもたせられたように感じた。
その作業は 愛情をかけ記憶を縫い合わせているかのようだった。

花とともに うたかたの記憶。
どうか仕立てのいいドレスとなりますように。