四月の魚が見る夢は
2018年 鎌倉観光協会HP掲載「かまくらかたおもい」





わたしは 空を飛びたい‬
きれいな衣をまとい
踊るように揺れる
あの 桜の花びらのように







けれども わたしは
わたしは 魚
目をひらいて深く深く 潜る






いつか 花びらだったなら
たゆたう陽ざしのなか
春のかすみに会釈して






陽だまり集う カーテンに
相づちをうち






わたしは どこへ飛んでいこうか









白い衣はときに汚れて
うす紫となるのかな







朝露に濡れた体は冷えきり
萎れてしまうかな








けれども光に暖められて
ふたたび空へと舞い上がり
ふんわりふんわり
音もなく
ふんわりふんわり
落ちるでしょう









風にふかれて山へ近づき
椿の花をくぐりぬけ








水の碧さに心うばわれ










春の都の情景を想い






気づいた時には窓からヒュルリ









風呂屋の壁の魚をみてた


そうしてわたしは気づくのです












これは夢見草がみせた
夢なのだと







わたしは魚
空は見上げることの ほかにない

わたしは魚
夏の季節に また何を想う