2通目のLetter
2017年 キヤノンギャラリー銀座写真展



同じ人に、同じ時に、手紙を2通つづったなら
書き手の真実はどちらに表れるだろうか。

写真を撮ることと 手紙を書くことは とてもよく似ている。

----------- 拝啓、海の街のあなたへ--------------

1通目の手紙は、心苦しい淡い想いで満ちていた。
ふり向いてくれたなら、私はここにいますと、4年間通った鎌倉に
たくさん話しかけた。
私と鎌倉との愛しい距離は写真の中にあった。
海、山、森、畑、人、祭り、、、、

2通目の手紙は、そこには 私は いなかった。
いたのは 浜辺で出合った猫だ。
彼なのか、彼女なのか、この猫が私の目になった。
猫の目で見た世界は心地よく、主体になる被写体は必要なかった。
この街で出合ったモノとモノの間には
正しく美しい距離、空間があるような気がした。
梅雨明けを待つ海と 流木の間にあるもの。
秋初めの黄色い光の窓辺と 古いバイクの間にあるもの。

猫は言ったのだ。
私は手紙を書きたい。
ヒゲをピンと伸ばし
毛並みを整え。
ああ、肉球が邪魔だなあと。

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